特別寄稿
沙羅の木会相談役 酒井光子(S28年卒)
12月1日(火)いずみホールに於きまして山田耕筰先生没後50年記念演奏会を、 実行委員会と沙羅の木会が共催という形で開催致しました。 満席の“いずみホール”ステージ上後方には相愛高、相愛大生が席を占め、 山田耕筰先生に直々に教えを受けた人々、先生を敬愛する人々が会場を埋め尽くしました。 その熱気は言葉に表すことが出来ません。 先ず、相愛学園歌(大木惇夫 詞・山田耕筰 作曲)相愛高校音楽科生による合唱です。 このプログラムは正にこの演奏会の象徴でありました。 演奏者は学園歌の心を高らかに歌い上げ、 「輝かしく、重い伝統を確かに今、ここで受け継ぎます」との宣言を満場に響かせました。 そして、器楽独奏、合唱、歌曲独唱、ピアノ、フルート、ヴァイオリンと 多種の楽器、合唱、歌曲と広い分野にわたる山田先生の作品が、 卓越した技術、感性豊かな奏者により演奏され、山田耕筰先生の世界を満喫させて頂きました。 尾高忠明先生指揮による相愛フィルハーモニアの演奏。 大学の先生方を始め、縁ある多くの方々により編成された重厚なメンバーによる演奏は 感動深く、山田耕筰先生もご満足頂いたと思います。 締めくくりは、オーケストラ伴奏による来場者全員合唱。 からたちの花〜赤とんぼ〜この道 みんなで声を合わせる喜びと、山田耕筰先生への深い感謝をこめて、ていねいに歌いました。 当日のプログラム冊子について。 実行委員の方々が全力を尽くして作成されたことが伺える非常に充実した内容の冊子です。 記念誌として永く保存して頂きたく思います。又、学園、学部のPRにも有効と思われます。 編集に当たられました方々に敬意を表したいと存じます。 この演奏会に出演された方々、聴衆の方々、すべての方々の心を繋ぐのは山田耕筰先生への敬愛の心であります。 ここに改めて偉大なる山田耕筰先生へ尊敬と感謝を捧げます。 そして、この演奏会を企画、実行するに当たってお力をお尽くし下さったすべての方々に 感謝申し上げます。 (当日舞台にて紹介されました) 本日は、山田耕筰先生没後50年記念演奏会の開催、誠におめでとうございます。 私もこの日を心待ちにしていましたのですが、体調を崩し、さすがに108才の身になると快復にも時間がかかり、 皆様にはご迷惑をおかけしてしまい本当に申し訳なく思っております。 私もとても残念でなりません。せめて山田先生の思い出の一つでもお伝えしようかと思いましたが、 山田先生のすばらしい業績につきましては、皆様もよくご存じの事と思いますので、 山田先生の茶目っ気のある、人間味あふれるエピソードを二つほどご紹介させていただきたいと思います。 どちらも私事で申し訳ないのですが、私の主人との交友関係でのお話です。 山田先生と主人とは関西学院の中学で山田先生が一つ上の先輩、音楽好きで馬が合って その頃からのおつきあいでした。相愛大学音楽学部が出来た時に、以前、 相愛女子専門学校の音楽科顧問をなさっていた山田先生に学部長として来ていただこうと 電話をしてくれたのも主人でした。 世界的に活躍されていた山田先生が二つ返事で「いいよ!」とおっしゃってくださった時 は本当に嬉しゅうございました。 それで、エピソードの一つ目は、お名前のお話で、これはもう私もいろいろな場で 申し上げているのでご存じの方も多いことでしょうが、お年を召してから、 姓名判断で字画が悪いからと、「耕作」の「作」の字の上に「竹かんむり」をお付けになりました。 「竹」の字は片仮名で「ケケ」、その頃は「毛」がなくなっていらっしゃったので、 「毛」がなくなって「ケ」が付いたと笑っていたものでございます。 二つ目のお話は、ある年のお正月、元旦のことでございます。 突然、山田先生から主人宛に電報が届きました。その当時は、緊急に連絡する方法は 電報しかございませんし、元旦の電報なんて、ご不幸か何かの連絡くらいしか来るものでは ありませんから、ほんとうに驚いて急いで読んでみましたら、 「きみがいなくてさみしいよ」ですって。主人と二人、申し訳ないけれど大笑いしてしまいました。 こんな風に山田先生と主人とは終生あたたかい友情で結ばれておりました。 晩年には、山田先生は耳がお悪くなり、主人は目が悪くなり、「二人で一人前」 なんておっしゃっていたこともありました。 本当に山田先生の思い出は尽きることなく、それこそ、今日会場にお伺いしていたら、 次から次へとしゃべり続けて、司会者の方も、108才のおしゃべりを止めるに止められず、 おろおろさせていたかもしれませんね。 先日、NHKで山田先生の特集番組がございましたが、そこでも語られていましたように、 山田先生の業績はもっともっと評価されてもいいものと思っております。 この演奏会を機に、これからの音楽界を担う皆様には、山田先生の音楽をさらに広めるために ご尽力いただけたら本当に嬉しゅうございます。 私も、命の続く限り、山田先生のお教えを皆様にお伝えし続けていきたいと思っております。 それでは、これからの相愛大学のますますの発展と、皆様のますますのお幸せとご 活躍をお祈りして、108才のおしゃべりばあさんのお耳汚しはこれで収めさせていただきたいと存じます。 嘉納愛子
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